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シンポジウム・学習会2017/12/13

公開シンポジウム『取調べのビデオ録画~その撮り方と証拠化~』を実施しました

取調べの録音録画が注目を集めたいわゆる今市事件では、捜査段階のビデオ録画が7時間あまり法廷で再生され、被告人の捜査段階の自白が犯人性の決め手となり有罪判決となりました。判決後記者会見で裁判員たちは、「どちらになるか解らなかった」「ビデオの映像で判断できた」との感想を述べ、判決文も供述態度を指摘しました。取調べのビデオ録画の撮り方と証拠化の課題を改正刑訴法の先取りとして社会に突きつけた事件です。取調べの一部録画再生の問題、供述証拠の任意性判断だけでなく補助証拠として信用性判断の証拠としたこと、被疑者を正面から撮影した映像中心であったことが任意性肯定の偏った心理的影響を与えたとの指摘もあります。東京高裁平成28年8月10日判決における取調べの録音録画の実質証拠化や取調の供述態度からの心証形成への警鐘もあります。そこで、これらの課題を、取調べのビデオ録画の撮り方と証拠化の視点から専門家を招いて討議するため公開シンポジウムを2017年12月11日に行いました。

当日は、第一部として、今市事件を傍聴した平山真理氏(白鷗大学教授)に『今市事件の概要とビデオ録画の課題~法廷傍聴を踏まえて』と題して特別報告をしていただきました。

第二部では、牧野茂弁護士(裁判員経験者ネットワーク代表世話人)の進行で、

指宿信氏(成城大学教授)、青木孝之氏(一橋大学教授 元裁判官)、周防正行氏(映画監督)、小池振一郎氏(弁護士)、平山真理氏(白鷗大学教授)によるパネルディスカッションを行いました。

また、当日の様子は、指宿教授が指摘した容疑者を正面から撮影する検察の録画方法の問題点や周防監督のコメントを含め、NHKで次のように報道されました。

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取り調べ録音・録画「間違った印象与えるおそれも」

 

裁判員裁判の対象になる殺人事件などの取り調べで行われている録音・録画について考えるシンポジウムが都内で開かれ、研究者から「現在の撮影方法では裁判員などに間違った印象を与えるおそれもある」という意見が出ました。

裁判員の経験者や弁護士などでつくる団体は東京・渋谷区でシンポジウムを開き、裁判員制度の導入に当たって始まった取り調べの録音・録画について意見を交わしました。

当初は取り調べに問題が無かったか確認する手段として行われていましたが、検察は有罪の裏付けになるとして映像そのものを証拠として使うようになり、栃木県旧今市市の女の子が殺害された事件では、取り調べのときの態度などを考慮して有罪判決が言い渡されました。

シンポジウムでは大学の研究者が「人を撮影する向きによって印象がどう変わるか実験したところ、容疑者を正面から撮影する検察のやり方は『自発的に真実を話している』という印象を与えやすいことがわかった」と説明し、裁判員などに間違った印象を与えるおそれもあると述べました。

シンポジウムに参加した映画監督の周防正行さんは「人は見たいものしか見ない。有罪だと思っている人が見ると『まさに有罪の証拠だ』と考える可能性もある。安易に証拠として使うのは危険だ」と話していました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171210/k10011253641000.html

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