裁判員経験者ネットワーク ロゴ

その他2013/04/26

「裁判員の心理的負担について」コメント

「裁判員の心理的負担について」コメント

2013年4月26日 裁判員経験者ネットワーク 世話人一同

一部報道によりますと、今月(2013年4月)、福島県のある女性裁判員経験者の方が「急性ストレス障害」と診断され、国に対して損害賠償の訴えを起こすことも検討している、とのことです。

この報道に接し、まず裁判員経験者ネットワーク(以下当ネットワーク;https://saibanin-keiken.net/)世話人一同として、この裁判員経験者の方にお見舞いを申し上げると共に、改めて最高裁判所に裁判員及び裁判員経験者の「心のケア」の充実を早急に図るよう、求めたいと思っています。

これまでに当ネットワークでは、2010年12月9日に最高裁判所に対して「裁判員の心のケア」に関する緊急提言『裁判員の心理的負担についての裁判所の対応策への緊急提言』を行いました。この提言では、「裁判員の心理的負担」に対する裁判所の対応策や裁判員メンタルヘルスサポート窓口での対応などについての5つの項目、合計23点の具体的な提言をし、裁判員及び裁判員経験者の心のケア体制の充実を図るよう、訴えてきました。しかし今回報道されている内容を見ますと、上記提言からこれまでの間で、心のケア体制が改善・充実されず、憂慮すべき状況が放置されたままであるのが実情と言えます。その顕著な例として、この裁判員経験者の方が対面カウンセリングを希望した際、最高裁が開設している「メンタルサポート窓口」で、交通費を自分で負担して東京に行かないと対面カウンセリングが受けられないと言われ、対面カウンセリングを断念したということがあったそうです。これが事実だとすれば、このような対応を裁判所がとっているということに正直驚くと共に、失望の念を禁じえません。ケアを求める裁判員経験者にとり、このような裁判所の対応はあまりにも酷です。国民の司法参加を実現した貴重な裁判員制度を支える裁判員の心のケアに対する裁判所側の理解不足とケア体制の不備を露呈しているものと言え、裁判所は早急に裁判員及び裁判員経験者の心のケアの充実を図るよう努めるべきです。

当ネットワークでは裁判員経験者の交流会を定期的に開催することを柱にして活動を行ってきました。過去3年の間、延べ11回の交流会に多くの裁判員経験者が参加してきました。この交流会はカウンセリングの「グループワーク」の手法を取り入れつつ、臨床心理士や弁護士の立会いのもと、ゆっくりと自由にグループで話ができるような形で進めます。この交流会の参加者からは経験者同士の交流が図れ、情報交換や知見を深める機会となっているとともに、「話し合えることで心が軽くなった」「似た経験をした人同士で話せて、気持ちが整理できた」などといった、心の負担が和らいだとする感想も寄せられていることから、裁判員として同じような経験をした人同士が語り合うことで、心の負担を和らげる効果があると考えます。もし裁判員経験者で心に負担を感じている方がいらっしゃれば、ぜひ当ネットワークにご連絡を頂き、交流会という形で心の負担を和らげるきっかけを掴んで頂ければと願っております。

裁判員及び裁判員経験者に対する心のケアが十分に行われていない状況は問題だと考えます。私たちは一日も早く裁判員及び裁判員経験者に対する心のケアの充実が早急に図られることを求めます。

以上

お知らせ一覧へ戻る